顕微授精すると 発達障害が増えるって本当?

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今日のテーマ:顕微授精と発達障害

「顕微授精すると
発達障害が増える」
これって本当???

SNSを見ていて、

「顕微授精だとダウン症リスクが上がる?」
「顕微授精だと発達障害が増える?」

そんな不安をあおる投稿を
見たことはありますか?

妊活・不妊治療を頑張っている中で、
このような情報を見ると、

「顕微授精まで進んで大丈夫なのかな」
「赤ちゃんに何かあったらどうしよう」
と不安になりますよね。

でも、
その言葉鵜呑みにしないでください。
 

そもそも顕微授精って何?

顕微授精は、正式には
卵細胞質内精子注入法・ICSI
と呼ばれる治療です。

通常の体外受精

採取した卵子の周りに複数の精子を置き、精子が自分の力で卵子の中へ入るのを待ちます。

顕微授精

培養士が顕微鏡で精子を確認し、選んだ1個の精子を細い針で卵子の中へ直接注入します。

顕微授精が選ばれる主なケース

  • 精子の数が非常に少ない
  • 精子の運動率が低い
  • 精子が自力で卵子へ入ることが難しい
  • 過去の体外受精で受精しなかった
  • 凍結卵子・精子を使用する
顕微授精は、
精子が卵子へ入る過程を
医学的にサポートする治療です。
顕微授精は、
精子と卵子が出会うための

大きな壁を
乗り越える治療
です。

発達障害について

SNSでは、
発達障害、自閉スペクトラム症、
知的障害、ダウン症、
先天異常、染色体異常が、

すべて同じような意味で
使われていることがあります。

しかし、これらは
同じものではありません。

発達障害・神経発達症

自閉スペクトラム症、ADHD、知的発達症、学習症などを含む言葉です。遺伝的背景、妊娠中や出産時の要因など、多くの要素が複雑に関係すると考えられています。

ダウン症

21番染色体が通常より1本多いことによって起こる染色体疾患です。多くは卵子や精子が作られる過程で偶然起きた染色体の分配エラーによって生じます。

なぜ「顕微授精は障害が増える」
と言われるようになった?

①人工的に精子を入れることへの不安

通常の受精では、
精子が女性の体内を進み、
卵子の周囲へ到達して
卵子の中へ入ります。

顕微授精では、その一部を
培養士が代わりに行います。
 

そこから、
それって自然じゃ無いのでは?
という不安が生まれました。


しかし、
精子を直接注入するから発達障害になる

という因果関係が
確認されているわけではありません。
 

②初期の海外研究が切り取られた

顕微授精は1990年代に始まった
比較的新しい治療です。
(体外受精は1980年ごろ)

過去には、発達の遅れや先天異常が
やや多い可能性を示した研究もありました。
 

ただ、初期の研究には、
対象人数が少ない、
親の年齢が高い、
男性不妊の重症度が違う
などの問題があり、

顕微授精そのものではなく、
他の要因の可能性が考えられ
科学的根拠が乏しくなっています。

③顕微授精を受けるご夫婦には背景がある

顕微授精は、
精子の数や運動率が著しく低いなど、
男性不妊があるご夫婦に多く行われます。

重度の男性不妊の一部には、染色体異常、Y染色体の微小欠失、遺伝子の変化、精子の染色体異常率の上昇などが隠れていることがあります。
顕微授精が原因なのか
顕微授精が必要になった
背景が原因なのか

完全に切り分けることは
簡単ではありません。

④早産や低出生体重が影響している可能性

過去の不妊治療では
複数の胚を移植することが多く、

多胎妊娠、早産、低出生体重児が
増えやすい時代がありました。

早産や低出生体重は、それ自体が
発達へ影響する可能性があります。

顕微授精 → 発達障害
リスクが上がるのではなく

本来の背景には親の年齢、
不妊の原因、遺伝的背景、
早産や低出生体重などの
要因が一緒に影響している。


体質や遺伝的なものが原因なのか
顕微授精そのものが原因なのか
何が本当の原因なのか
実際にはわからないんです。

 

ただ一つ言えることは
顕微授精をすると
発達障害が増える

と断定できる
科学的根拠はありません。

実際、顕微授精で
発達障害は増えるの?

正確なことを言うと、
顕微授精と発達障害の関係は、
まだ完全には分かっていません。

しかし、
現在までの大規模研究を総合しても、

顕微授精そのものによって、
子どもの発達障害が明確に増える
という一貫した結果は出ていません。

自閉スペクトラム症が
増えるという話は?

一部の研究では、
生殖補助医療や顕微授精と、
自閉スペクトラム症や知的障害との
関連を示した報告があります。

しかし全ての研究結果は
一致していません。

親の年齢、不妊期間、男性不妊、早産、多胎妊娠などを調整すると、差が小さくなったり、差がなくなったりする研究もあります。
自閉症が増えることが
証明されたのではなく

一部の研究で関連が示されたものの
顕微授精そのものが原因なのか
は分かっていない。

これが正確な表現です。

顕微授精だとダウン症が増える?

顕微授精だからダウン症が増える。
これも現時点では断定できません。

ダウン症の多くは、
21番染色体が3本になる
「21トリソミー」によって起こります。

最大のリスク因子として
知られているのは母体年齢です。


顕微授精を受ける方は
自然妊娠する方より年齢が
高いことがあります。

そのため、
顕微授精後の妊娠で
ダウン症がみられても、

治療の影響なのか
年齢による確率なのかを
区別することができません。

だから、

顕微授精によって
ダウン症が明確に増える
科学的根拠はありません。

ダウン症や染色体異常の
可能性を考える際は、

女性の年齢、男性の年齢、
ご夫婦の染色体、重度男性不妊の有無、
家族歴なども含めて考える必要があります。

先天異常のリスクは
少し上がる?

自然妊娠と比較した一部の研究では
顕微授精で生まれた子どもに
先天異常がわずかに多い
という結果もあります。

ただし、これも前述と同様に
顕微授精を選択するご夫婦には、
重度男性不妊、高い年齢、
長期間の不妊、遺伝的背景、
基礎疾患などが多く含まれます。
顕微授精が直接
先天異常を作り出していると
結論づけることはできません。

昔と今では顕微授精の
技術も変わっている

不妊治療の技術は、
顕微授精が始まった
1990年代から大きく変化しています。

  • 培養液・培養器
  • 温度やガス濃度の管理
  • 精子の選別方法
  • 卵子への注入技術
  • 胚の評価方法
  • 凍結技術
  • 単一胚移植の普及
だから、今の顕微授精は、
過去の報告と同じものとして
簡単に比べることはできません。

不妊治療で授かったことを責めないで

叶うなら自然に授かりたい。
そう思う方もいると思います。

できればタイミング法で。
できれば人工授精で。
できれば体外受精で。

顕微授精まで進むことに、
抵抗や罪悪感を抱く方もいます。

でも、伝えたいのが

自然妊娠も、
体外受精も、
顕微授精も、

授かった命の価値に
違いはありません。

顕微授精は、
赤ちゃんを人工的に
作る治療ではありません。

ご夫婦の精子と卵子が出会うために
医学の力でほんの少し
手助けをする治療です。

顕微授精だったからこそ出会えた命が、世界中にたくさんあります。

最後に

SNSで顕微授精の投稿を見て、
「不妊治療が怖くなりました」
「もう顕微授精を受けたので毎日不安です」

というメッセージをよくいただきます。

どうかSNSの強い
言葉だけを鵜呑みに
しないでください。


現時点では、
顕微授精をすると
発達障害が増える

と断定できる科学的根拠はありません。
 

顕微授精によって出会えた命は
自然妊娠で出会えた命と同じ
かけがえのない大切な命。

必要以上に怖がらず
でも不安なことは放置せず

確認しながら治療を
進めてください。

皆さまが安心して妊活を続け
大切な命と出会えますように。