不妊と便秘
出ないだけ
では終わらない
「2〜3日出ないことはよくあるし…」
「便秘だけど、妊活とは関係ないよね?」
そう思っている方。
妊活中の便秘、
ただの“お腹の問題”として
終わらせない方が
いいかもしれません。
もちろん、
便秘になる=妊娠率が下がる
と直接証明されているわけではありません。
でも近年の研究を一つずつ見ていくと、
腸の動き、腸内細菌、
代謝物、酸化ストレス、
卵子を取り巻く環境、
子宮内膜。
これらが完全に別々の話ではない
可能性が少しずつ見えてきています。
そもそも
2〜3日出ない=便秘
ではない
実は便秘は、
「何日出なかったか」
だけでは決まりません。
☑️週3回未満しか自然排便がない
☑️便が硬い・コロコロしている
☑️強くいきまないと出ない
☑️出し切れていない感じがある
☑️出口で詰まっている感じがある
つまり「2日に1回だから便秘」とも、
「毎日出ているから便秘じゃない」
とも限りません。
毎日出ていても、
毎回カチカチの便で強くいきむ、
残便感があるなら便秘症状に
当てはまることがあります。
「気持ちよく出せているか」
まで見てください。
便秘になると
腸の中で何が起こる?
便秘になると、
便が大腸の中に留まる時間、
つまり、
腸管通過時間が長くなることがあります。
便が硬くなるだけでしょ?
って思うかもしれませんが
実は、
それだけではありません。
人を対象にした研究では、
便が大腸を通過する時間が長い人ほど、
酸化ストレスが高まる報告が💥
便が腸の中に長く留まると、
腸内細菌が最初に利用しやすい
糖質や食物繊維が少なくなっていきます。
すると一部の腸内細菌は、
残っているタンパク質や
アミノ酸を分解してエネルギーを
作る割合が増えていきます。
便が腸内に長く留まる
↓
腸内細菌が利用しやすい
糖質が少なくなる
↓
タンパク質を分解する
割合が増える
↓
腸粘膜に負担をかける
代謝物が増えやすくなる
↓
腸の炎症や活性酸素の増加に
つながり、酸化ストレスが
高まる可能性が💣
便が長く留まることで、
全身の負担につながる可能性が。
便秘になると毒素が
溜まるって
聞いたことありますか?
💬便が3日出ていないから
体中に毒素が回っている。
💬腸に毒が溜まるから卵子の質が落ちる。
なんてことが言われることが
ありますが少し違います。
便そのものから毒が染み出して、
そのまま血液に乗って全身を巡る。
そんなことはありません。
ただし、
腸の中に内容物が
長く留まることで、
腸内細菌が作る代謝物の
種類や量が変化する可能性
はあります。
ではなく
腸内細菌の代謝環境が
変わる可能性がある
便がスムーズに流れている時は、
腸内細菌が食物繊維などを利用して、
腸の粘膜を支える「短鎖脂肪酸」などを作ります。
ところが、
便が長時間腸内に留まると、
腸内細菌が利用しやすい糖質が少なくなり、
タンパク質やアミノ酸を
分解する割合が増えていきます。
すると、
アンモニア・硫化水素・フェノール類など、
増えすぎると腸の粘膜に負担をかける
代謝物が作られやすくなります。
その代謝物が卵子の質に影響する
「酸化ストレス」の発生に繋がります。
便秘と酸化ストレス
には関係がある?
慢性的な便秘と
酸化ストレスとの関連を
調べた研究があります。
大腸粘膜で活性酸素の産生に関わる
NOX1・DUOX2という酵素の発現が高く、
炎症に関係する物質も増えていました。
酸化ストレスは
卵子を取り巻く環境
と関係する
卵子は、
卵巣の中にポツンと
存在しているわけではありません。
卵子は卵胞液という液体に
囲まれた環境の中で育っています。
卵子が育つ環境
も大切なんです。
2026年に発表された研究では
顕微授精を受けた30名の女性から
得られた211個の卵子について、
卵胞ごとの環境が調べられました。
抗酸化能力
成熟卵や良好胚につながった卵胞で高い傾向。
酸化ストレス指数
成熟卵や良好胚につながった卵胞で低い傾向。
MDA
脂質が酸化した時に増える「酸化ダメージの痕跡」のような指標で、低い傾向。
成熟卵や良好胚を獲得しにくい結果に。
酸化環境と
卵子の成熟・胚の質
には関連がある
ということが
わかっています
毎日の生活の中で酸化ストレスを
減らすていくことが大事。
便秘の改善もその一つです。
妊活中は「鉄」で
便秘になる人もいる
妊活中は、
貧血や鉄不足を指摘されて、
鉄剤や鉄を含むサプリメントを
飲んでいる方も多いと思います。
高用量の鉄剤や鉄サプリメントでは
便秘が起こることがあります。
「妊活を始めてから急に便秘になった」
という方は、
食事だけではなく、
今飲んでいる薬やサプリメントが
変わっていないかも
一度確認してください。
妊活中の便秘
まず何をしたらいい?
① 食物繊維
野菜だけでなく、豆類、海藻、果物、オートミール、全粒穀物、きのこ、ナッツなどの摂取も心がけて。
② 水分
水分が少ないと便が硬くなることがあります。
便の80%は水分でできているため
水分不足になると便が硬くなり便秘になりやすい。
水分足らないかも...と感じる方は1日500ml程度プラスしてみてください。
③ 運動
激しい運動は不要。歩く、階段を使う、座りっぱなしを減らすだけでも構いません。
④ 便意を我慢しない
朝食後は腸が動きやすい時間帯。朝にトイレ時間を作るのも一つです。
⑤ 薬・サプリを確認
鉄など、便秘につながる薬やサプリがあります。自己判断で中止せず相談を。
⑥ 極端な食事制限をしない
食事量が減れば便の材料も減ります。妊活中は必要な栄養を摂ることを優先してください。
まとめ
精子を作る身体も
受精卵を迎える子宮も
腸も、免疫も、代謝も
全部同じ身体の中にあります
だからこそ、
食事、睡眠、運動、排便。
そんな一見地味な毎日の積み重ねも、
妊活では大切にしてほしいと思います。
たかが便秘で
終わらせないで
できることは
不妊治療だけではありません。
今日の食事を少し変える。
水分を摂る。歩く。眠る。
そして、ちゃんと出す。
そんな小さなことも、
未来の妊娠を支える
身体づくりの一つ。
参考文献
本コラムは、以下の論文・公的資料を参考に作成しています。
- 1. Rome Foundation. Rome IV Criteria:Functional Constipation. 機能性便秘の診断基準。排便回数だけでなく、硬便・いきみ・残便感なども含めて評価されます。
Rome Foundation - 2. Roager HM, et al. Colonic transit time is related to bacterial metabolism and mucosal turnover in the gut. Nature Microbiology. 2016;1:16093. doi:10.1038/nmicrobiol.2016.93.
大腸通過時間が長いほど、腸内細菌の代謝が糖質発酵からタンパク質分解側へ傾き、タンパク質由来代謝物が増える関連を報告。
論文を見る - 3. Wei X, et al. Increased NOX1 and DUOX2 expression in the colonic mucosa of patients with chronic functional constipation. Medicine (Baltimore). 2022;101(32):e30028. doi:10.1097/MD.0000000000030028.
慢性機能性便秘患者の大腸粘膜で、活性酸素産生に関わるNOX1・DUOX2や炎症関連因子を検討した研究。
PubMed - 4. Korkmaz O, et al. A multidimensional follicular profile integrating oxidative stress, apoptosis and PI3K/AKT/mTOR signaling in relation to oocyte developmental competence in in vitro fertilization cycles. Journal of Assisted Reproduction and Genetics. 2026. doi:10.1007/s10815-026-03909-y.
ICSIを受けた30名・211個の卵子を解析し、良好なIVF結果と高い抗酸化能力、低い酸化ストレス指数・MDAとの関連を報告。
PubMed - 5. Nagy RA, et al. Trimethylamine-N-oxide is present in human follicular fluid and is a negative predictor of embryo quality. Human Reproduction. 2020;35(1):81-88.
腸内細菌と肝臓の代謝に関係するTMAOがヒト卵胞液中に存在し、受精・胚の質との関連を調べた研究。
論文を見る - 6. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK). Eating, Diet, & Nutrition for Constipation. 便秘対策として、食物繊維を十分に摂ること、水分を確保することなどを解説した米国国立衛生研究所(NIH)関連機関の資料。
NIDDK - 7. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK). Treatment for Constipation. 食事・水分、運動、排便習慣、薬物療法など慢性便秘の一般的な対策を解説。
NIDDK - 8. NIH Office of Dietary Supplements. Iron Fact Sheet for Consumers. 高用量の鉄サプリメントで便秘、悪心、腹痛などが起こる可能性について解説。
NIH Office of Dietary Supplements