ストレスと不妊

おにゃんこ先生の妊活コラム

ストレスと不妊について

赤ちゃんのために、
頑張っている。
でも、その妊活で
あなたが限界にならないで。

排卵日を調べる。
タイミングを合わせる。
仕事を調整して通院する。
食事に気をつけ、体を整える。

こんなに頑張っているのに、
生理が来るたび、また落ち込む。

そこへ追い打ちをかけるように、
「考えすぎだからできないんじゃない?」
「もっとリラックスしたら?」
と言われてしまう。

妊活のストレスに加えて、
「ストレスを感じている自分」まで
責めてしまっていませんか。

今日は、米国の生殖医療施設
ボストンIVF(Boston IVF)の発信と、
そこで行われた研究を手がかりに、
ストレスと不妊の関係をお話しします。

妊活に必要なのは、
頑張ることを増やすだけではありません。

抱えている負担を減らすことも、
大切な妊活です。

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ストレスは、
妊娠しやすさに関係する?

まず、お伝えしたいことがあります。

不安になる日があっても
泣いてしまう日があっても
それだけで妊娠への道が
閉ざされません

ストレスと妊娠の関係は、
長年研究されてきたテーマです。

ただ、日常の不安や緊張が
妊娠率をどの程度変えるのか、
研究結果は一つにそろっていません。

基本的にはストレスがあるからといって
妊娠率がガクッと下がることは
考えられていません。

ですが、
ストレスが妊娠に及ぼす影響が
ゼロではありません。

まだ不明な点がある一方、
ストレスを和らげることは
妊活の根本を支えます。

妊娠を目指す時間の中で、
食べること、
眠ること、
笑えること。

そうした毎日を守る意味でも、
心のケアに目を向けてほしい。

妊活のつらさは、
「気にしすぎ」で
済むものではない。

ボストンIVFのウェルネスセンターを創設した
心理学者アリス・ドマー博士は、
不妊に伴う心の負担を研究してきました。

2021年の報告では、

不妊に悩む女性の不安・抑うつが、
がんや心疾患などの患者さんと

同程度だった過去の調査
を紹介しています。

これは病気の重さを比べる話ではなく、
心理的な負担を測った結果です。

出典:Boston IVF「Maintaining Your Emotional Health During Infertility」

外から見えなくても
あなたは大きな負担を
抱えながら生活しています

不妊治療は、病院にいる時間だけで
終わるものではありません。

  • 次の通院に合わせて、仕事の予定を変える。
  • 採卵や移植の結果を待ちながら、普段どおりに働く。
  • 友人の報告を聞いて、笑顔を作る。
  • 「いつまで続くんだろう」と思いながら、費用を計算する。
  • 夜、スマホを閉じても、妊活のことが頭から離れない。

朝から晩まで、
目に見えない予定と心配がついてくる。

その状態で「前向きでいよう」と
自分を奮い立たせ続けたら、
疲れてしまう日があって当然です。

周りが思うより、ずっと大変。
自分が認めているより、
ずっと頑張っている。

まずは、そのことを
あなた自身が認めてあげてください。

ストレスは、
心の中だけに
とどまらない。

緊張したときに、心臓がドキドキする。
心配事があると、食欲がなくなる。

心の状態に体が反応することは、
誰もが経験することです。

ストレスが続くと、疲労感、集中しにくさ、
いら立ちなどが現れることもあります。

出典:SART「Stress and Infertility」

① 排卵・月経を調整する仕組みとの関わり

排卵は、卵巣だけで決まるものではありません。

脳の視床下部、下垂体、卵巣が
ホルモンのやり取りをしながら調整しています。

実は、強い心理的負担やエネルギー不足、が関わってこの働きが抑えられることがあります。

その結果、排卵が起こりにくくなったり、
月経が止まったりすることも。

心を休ませることは、
妊娠するための体づくりの
大きなきっかけになります。

出典:Endocrine Society「Functional Hypothalamic Amenorrhea」診療ガイドライン

② 眠る・食べる・休む余裕が削られる

検索していたら、深夜になっていた。
結果が気になって、食事が進まない。
休日も考えすぎて、休んだ気がしない。

こうした日が続けば、
体の疲れと気持ちのつらさが重なります。

体のために頑張っているのに、
体を休める時間がなくなってしまう。

③ 性行為や夫婦の会話が「課題」になる

「今日を逃したら、また1か月待たないと」
「大事な日なのに、どうして分かってくれないの」

タイミングへの重圧が強くなると、
性行為や二人の会話がつらくなり、
避けたくなることもあります。

ボストンIVFの対談でも、
不妊治療が親密さや関係性に及ぼす負担が
取り上げられています。

出典:Boston IVF「Stress and infertility, a meeting of the mind」

考えることは悪いことじゃない。
でも、オンオフの切り替えを忘れないで。

④ 治療を続ける力が尽きてしまう

精神的な負担が大きすぎると

んでいるのに、
つらすぎて妊活できない。

となってしまうことも。

あなた自身の生活と、
妊娠できる可能性
を守るためには、
心のケアも大事です。

壊れてしまってからでは遅いんです。

心のケアを取り入れた群で、
妊娠率が高かった報告も。

ボストンIVFでは2011年、
初めて体外受精を受ける
40歳以下の女性143人を、

全10回の心身のケアプログラムを受ける群と、
受けない対照群に無作為に分け、

2回の体外受精周期まで追跡しました。

2011年の研究:2回目の体外受精周期における臨床妊娠率
比較した群 臨床妊娠率
心身のケアプログラム群 52%
受けない群 20%

出典:Domar AD, et al. Fertility and Sterility, 2011.

ストレスと妊娠の関係には、
さらに研究が必要です。

それでも、心のケアを妊活に取り入れる
ことは重要だと私は考えています。

「もう、続けられない」
その背景にあるストレス。

赤ちゃんを望む気持ちは変わらない。
でも、次の治療を考えるだけで苦しくなる。

そんな気持ちになる方は、
決してあなただけではありません。

ボストンIVFが報告した調査では、
体外受精後に出産に至らず、
1年以上その施設へ戻らなかった
女性312人の回答を分析しました。

このうち、
他施設でも治療を続けず中断した女性が
挙げた理由は、次のとおりでした。

治療を中断した女性が挙げた理由(複数回答)
中断の理由 回答割合
これ以上の治療は精神的
ストレスが大きすぎる
40%
自己負担額を払えない 25%
保険の適用を失った 25%
自然妊娠した 24%

出典:Domar AD, et al. Fertility and Sterility, 2018.

この調査で最も多かった理由は、
心理的な負担でした。

妊活を頑張り続けていると、
知らず知らずのうちに、
心の負担が大きくなっていきます。

それが、
体外受精の大きな結果が出た時に
妊活する気力を奪ってしまうことも

頑張り続けること
だけが正解じゃない
時には休むことも
大切な妊活です

妊活で「完璧」を目指すと、
自分を追い詰めて
しまうことも。💣

ここからは、
妊活に向き合う皆さんへ、
私からお伝えしたいことです。

妊活のつらさを大きくしやすい
考え方の一つに、
「完璧主義」があります。

これは、性格で不妊が
決まるという意味ではありません。

「完璧にできなかった自分を許せない」と、
予定が変わるたびに
自分を責める理由が増えてしまう、
という話です。

今日絶対タイミングを取る!
と決めていたのに、
排卵日がずれた。

今周期こそ体を完璧に整えよう
と思っていたのに、
残業が続いた。

これだけ気をつければ大丈夫
と思っていたのに、
また生理が来た。

計画どおりに進まなかったことと、
自分の努力が足りなかったことを、
同じものとして受け止めてしまう。

でも、そもそも生理周期も排卵日も、
毎回カレンダーどおりに
動くものではありません。

検査や予測を使っても、
すべての経過を思いどおりに
することはできません。

1日も誤差なく
一度も予定を崩さず
完璧に妊活をするのは
現実的ではありません

妊活は、学校のテストのように
「正解を全部そろえれば100点が取れる」
というものではないのです。

食事に気をつけても。
タイミングを合わせても。
指示どおり治療を受けても。

望んだ結果にならない周期はあります。

そのたびに、
自分の生活の小さな出来事を
全部「失敗の原因」に
しなくていいのです。

「あの日、イライラしたから」
「あの食事がよくなかったから」
「前向きでいられなかったから」

答えの出ない犯人探しを、
あなたの中で続けないでください。

大切に思うことほど、
人は「まだ何か足りないかもしれない」と
不安を探してしまうことがあります。

それは、あなたが真剣に望んでいるから。

完璧じゃ無い日でも
自分を責めないでください

「まぁいっか」は、
あなたの心を守る言葉です。

予定どおりにいかないたびに
「なんで……!」と自分を責めていたら、
心が持ちません。

うまくいかなかった日にこそ、
自分にかける言葉を少し変えてみませんか。

予定がずれた日

思いどおりにはいかなかった。
→まぁいっか
次はきっと大丈夫。

食事を作れなかった日

「自炊できなかった」
→まぁいっか
楽することも大事。

力を抜いていい。
考えない時間を作っていい。

あなたは十分、
頑張っています

完璧じゃなくても大丈夫
自分のペースで
妊活してくださいね。

「ストレスをなくさなきゃ」
まで頑張らなくていい。

ストレスケアが大事だと聞くと、
今度は「ストレスを感じないこと」を
目標にしてしまう方がいます。

「今日も不安になってしまった」
「また夫にイライラした」
「これじゃ、ダメだよね…」

それでは、心を楽にするはずのケアが、
新しい採点項目になってしまいます。

いつも笑顔でいなくていい
毎日前向きでなくていい

「ストレスがゼロの自分」を作ることを、
妊娠するための条件にしないでください。

妊活中のストレスを減らす、
7つの小さな工夫。🌿

全部を実践する必要はありません。
「これなら少し楽になりそう」と思うものを、
一つだけ選んでみてください。

01検索を終える時間を決める

安心したくて調べ始めたのに、
気づいたら不安が増えている。
そんな日は、情報が足りないのではなく、
疲れがたまっているのかもしれません。

「夕食後の15分だけ」など、
自分に合う区切りを作ってみる。
気になることはメモに残して、診察で聞く。
分からないことを、
今夜すべて解決しなくて大丈夫です。

02つらい投稿から距離を置く

同じ年齢、同じ治療、同じ回数。
似ている人の結果ほど、
比べてしまうことがあります。

見ると苦しくなる投稿は、ミュートしてもいい。
参加がつらい集まりは、断ってもいい。
誰かを嫌いにならなくても、自分を守る距離は取れます。

03「妊活のため」ではない楽しみを戻す

休日の予定まで、
「妊活にいいかどうか」
だけで決めていませんか。

好きな音楽を聴く。
読みたかった本を開く。
体調に合う範囲で、気持ちよく散歩する。
好きだから選ぶ時間を、
生活の中に戻してください。

04パートナーには、具体的なお願いを一つ

「もっと分かってほしい」には、
たくさんの寂しさや疲れが含まれています。

その全部を一度に伝えるのが難しい日は、
してほしいことを一つだけ
言葉にしてみてください。

「解決策より、10分だけ話を聞いて」
「通院の日は、夕飯をお願い」
「次の説明は、一緒に聞いて」

「気持ちを分かってもらうこと」に加えて、
実際の負担を一つ
引き受けてもらうこと
も大切です。

05体の緊張を緩める時間を作る

数回、ゆっくり息を吐く。
肩の力を抜いて、椅子に体を預ける。
心地よい音楽に耳を傾ける。

ちゃんと瞑想しようと構えなくて大丈夫です。

あなたが心地よいと感じる方法を使ってください。
鍼灸やカウンセリングなど、
人の手を借りて休む時間を
作ることも選択肢になります。

参考:ASRMのストレスケアに関する患者向け資料。散歩・音楽・心理療法・鍼灸などが挙げられています。

06医療者には「生活のつらさ」も伝える

診察で話していいのは、
卵胞の大きさやホルモンの数値
だけではありません。

「通院の調整が限界です」
「結果待ちの期間、眠れません」
「このペースで続けることがつらいです」

治療の負担を伝えることは、
あなたに合う進め方を
考えるための大切な情報です。

07毎日の「やらなきゃ」を一つ減らす

毎食手作りしなくていい。
通院の日まで、家事を全部終わらせなくていい。
疲れた夜は、何もしなくてもいい。

新しい健康法を追加する前に、
今の生活から一つ、負担を引いてみる。
「楽」をすることは
何も悪いことじゃ無いですよ。

ストレスを抱えていることを、
どうか責めないで。

ストレスと不妊の関係を知るとき、
いちばん忘れてほしくないのは、
「あなたが悪い」
という話ではない
ということです。

妊活や不妊治療には、
予定どおりにいかないことも、

努力だけでは
変えられないこともあります

このコラムで覚えていてほしいこと

ストレスだけで、
妊娠の結果は決まりません。

つらさは、生活や治療の
継続にも関わります。

ケアの目標は、あなたの負担を
少し軽くすることです。

完璧にできなくても、
自分を責めなくて大丈夫です。

体を整えることと同じように、
心が休める時間を作ることも大切です。

あなたは、すでに十分頑張っています。
もうこれ以上、頑張らなくても大丈夫。

あなたにとって
ストレスケアも
大事な妊活の一つ


そして、
頑張らないことも
大事な妊活です

今日は、何かを一つ減らしてみてください。
「まぁいっか」と言えることを、
一つだけ見つけてみてください。

赤ちゃんを迎えたいと願っている、
そのあなた自身の毎日も、
大切にしてほしいと思います。

おにゃんこ先生

参考文献・出典

Boston IVFの公式発信と研究論文、学会・公的機関の資料を参考に作成しています。研究結果の説明と、執筆者からのメッセージ・生活上の工夫を組み合わせています。

  1. Boston IVF. Maintaining Your Emotional Health During Infertility.2021年11月15日。不妊に伴う心理的負担について、Alice Domar博士の発信を紹介。
    Boston IVF公式記事
  2. Boston IVF. Stress and infertility, a meeting of the mind.2020年11月3日。ストレス、夫婦関係、心理的支援を扱う対談。
    Boston IVF公式記事
  3. Domar AD, et al. Impact of a group mind/body intervention on pregnancy rates in IVF patients.Fertil Steril. 2011;95(7):2269–2273. doi:10.1016/j.fertnstert.2011.03.046.
    40歳以下の女性143人を対象とした無作為化比較試験。本文の52%・20%は2回目の体外受精周期の臨床妊娠率。
    論文抄録(PubMed)
  4. Domar AD, et al. Burden of care is the primary reason why insured women terminate in vitro fertilization treatment.Fertil Steril. 2018;109(6):1121–1126. doi:10.1016/j.fertnstert.2018.02.130.
    治療に戻らなかった保険加入女性の調査。治療中断の理由として、心理的負担が最多だったと報告。
    論文抄録(PubMed)
  5. Szigeti F J, et al. The clinical effectiveness of the Mind/Body Program for Infertility on wellbeing and assisted reproduction outcomes: a randomized controlled trial in search for active ingredients.Hum Reprod. 2024;39(8):1735–1751. doi:10.1093/humrep/deae119.
    心身のケアプログラムと支援グループを比較。両群で心理面の改善がみられ、妊娠・出生の結果に群間差は認められなかった。
    論文を読む
  6. American Society for Reproductive Medicine(ASRM). Stress and infertility.2023年改訂。妊娠への影響の不確実性と、ストレスケア・生活の質についての患者向け資料。
    ASRM患者向け資料
  7. Society for Assisted Reproductive Technology(SART). Stress and Infertility.2017年。治療に伴うストレス要因と、慢性ストレスによる心身の反応を説明。
    SART教育動画・解説文
  8. Gordon CM, et al. Functional Hypothalamic Amenorrhea: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.J Clin Endocrinol Metab. 2017;102(5):1413–1439. doi:10.1210/jc.2017-00131.
    機能性視床下部性無月経の評価と対応に関する診療ガイドライン。
    診療ガイドライン学会による要点
  9. Boston IVF. Emotional Support at The Wellness Center.不妊治療中の感情や関係性、治療の選択に関する心理的支援の案内。
    Boston IVF公式ページ
  10. 厚生労働省 e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント ― 神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」妊娠前からの葉酸摂取とサプリメントの活用に関する公的情報。
    厚生労働省の解説
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