妊活中の飲酒の危険性
妊活中の飲酒を甘く見ない。
その1杯が、妊娠のチャンスに
関わるかもしれません。
結論から言います。
妊活中の飲酒は、
妊娠しやすさや不妊治療の結果に
影響する可能性があります。
「妊娠したらやめればいい」
「毎晩1本くらいなら大丈夫」
そう思って、なんとなく
飲み続けていませんか。
お酒が楽しみの一つだからこそ、
妊活との関係を知ったうえで
選んでほしいんです。
-
女性の飲酒と、妊娠しやすさの関連が報告されています。
-
男性の飲酒も、精液所見や治療結果に関わる可能性があります。
-
「1杯だけ」でも、度数と容量によってアルコール量は変わります。
過去の自分を責めるためではなく、
これからの妊活に役立てるために。
身近な例と一緒に、順番に見ていきましょう。
目次から、気になるところを読む
飲んでも授かった
だけで、安心しないで
「友達は毎日飲んでいたけど、すぐ妊娠したよ」
そんな話を聞くと、安心したくなりますよね。
実際、お酒を飲んでいても妊娠する方はいます。
ただ、その体験談だけで、
自分の妊活にも影響がないとは判断できません。
飲んでも妊娠する人がいる。
それでも、妊娠のチャンスに
影響する可能性はあります。
妊娠には、年齢、排卵、精子、子宮の状態など、いくつもの条件が関わります。一人の体験談では見えない差が、多くの人を調べると見えてくることもあるんです。
そして、お酒の見直しは、女性だけの話ではありません。
まずは、不妊治療中の男女を調べた報告からお伝えします。
治療を受けていても、
お酒の影響は無視できません
2022年に、複数の研究を集めて、飲酒と体外受精・顕微授精の結果を調べた報告が発表されました。
飲まない人と比べると、
週84gのアルコール摂取で、
次のような関連が報告されています。
約7%妊娠率低下
約9%妊娠率低下
5%のビール350mLを
週6本で届く量です。
「小さい缶を1本ずつ」の晩酌でも、
妊活と無関係とは言い切れないんです。
日々の飲み方にも目を向けてほしい。
研究の人数・詳しい数値を見る
この報告全体では、治療を受けた26,922人の女性および/またはそのパートナーのデータが扱われました。アルコールに関する14研究のうち、9研究が結果をまとめる解析の対象です。
週84gの推定値は、女性の妊娠成立がオッズ比0.93、男性の飲酒とパートナーの出生が0.91。推定の幅を示す95%信頼区間は、それぞれ0.90〜0.98、0.88〜0.94です。
毎日の飲酒量が増えるほど、
妊娠しやすさが下がる傾向
2017年には、
女性98,657人を含む19研究
を集めた報告も発表されました。
その中で、飲酒量と妊娠しやすさの関係を
調べると、次の傾向が見られました。
12.5g増える毎に
妊娠率が約2%低下
12.5gは、5%のビールなら約313mL。
350mL缶1本に近い量です。
※普段の飲酒量との関連です。「一度飲むたびに、妊娠率が2%ずつ下がる」という意味ではありません。
大切なのは、
習慣として続けている
飲酒に目を向けること。
一度見直す価値があります。
「相対的に2%」の意味と研究の補足
相対リスクという比較の指標は0.98。仮に20%という確率に0.98を掛けると19.6%になる、という種類の変化です。「20%が18%になる」という意味ではありません。この例で個人の妊娠率を予測することもできません。
飲酒量に応じた関係の解析は、19研究のうち8研究を使っています。妊娠までの時間、不妊の発生など、調べた指標は一律ではなく、研究間のばらつきも大きい結果でした。
相対リスク0.98の95%信頼区間は0.97〜0.99です。
排卵が終わったら
飲んでいいとも
言い切れません
2021年には、女性413人の飲酒記録から、月経周期の時期ごとに妊娠との関係を調べた研究もあります。
研究内の定義で週3〜6杯、またはそれ以上の飲酒と、妊娠成立のしにくさに関連がありました。
週6杯を超える飲酒で、妊娠成立のしにくさとの関連が見られました。
※この研究の「1杯」は、日本の缶やジョッキ1本とは同じではありません。比較的小規模な研究で、誰にでも同じ影響が出るとは限りません。
排卵後は、受精や着床、妊娠の始まりと重なる可能性がある時期です。
妊活中の飲酒習慣全体を見直して。
詳しい数値と「黄体期」の意味
黄体期は、排卵後から次の生理までの時期のことです。
飲まない群に対し、黄体期の週3〜6杯では妊娠成立のオッズ比0.56、週6杯を超える群では0.51。排卵期付近の週6杯を超える群では0.39でした。95%信頼区間は順に0.31〜0.98、0.29〜0.89、0.19〜0.72です。
男性のお酒も、
「関係ない」では済ませないで
男性16,395人を含む15研究を集めた報告では、飲酒がない・少ない群と、飲酒がある・多い群で、次のような差が報告されています。
約0.25mLの差
飲酒がない・少ない群が
静液量が多い報告。
とくに、
ときどき飲む人と
毎日飲む人の比較で、
差が目立つとされています。
夫婦で飲み方を見直す妊活へ。
「妊娠するのは妻だから」ではなく、
男性にもできることがあります。
精液の数値と研究の補足
精液量の平均差は0.25mL、推定の幅を表す95%信頼区間は、順に0.07〜0.42mL。
少量で顔が赤くなる方は、
「慣れたから平気」に注意
同じ量を飲んでも平気な方もいれば、顔が赤くなる、動悸がする、気分が悪くなる方もいます。
これは、お酒を分解する力に個人差があるためです。
分解酵素の働きが弱く、顔が赤くなるなどの反応が出る体質があると説明されています。
さらに、東アジア系の男性112人を調べた研究では、飲酒している男性の中で、分解酵素の働きが弱い遺伝子型の群は、精子の動きが低いという関連も報告されています。
自分にとっての安全の目安にはなりません。
飲酒をして顔がすぐに赤くなる方は、
妊活中は飲酒をしないことが理想です
分解酵素「ALDH2」と研究の補足
アルコールは、主にADHなどの酵素でアセトアルデヒドへ、その後、主にALDH2という酵素で酢酸へと分解されます。
ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)は、お酒の分解途中にできるアセトアルデヒドの処理に関わる酵素です。「日本人の約半数に酵素がまったくない」という意味ではありません。
2022年の男性112人の研究では、飲酒者のうち働きが低い遺伝子型の群と、正常に働く型の群で、総運動率の中央値が20%と41%、前進運動率が19%と37%でした。
飲酒が気になる
理由の一つが、
酸化ストレス。
アルコールを分解する過程では、活性酸素など、細胞への負担になる物質が生じます。
活性酸素が増えすぎて、
細胞に負担がかかっている状態のことです。
活性酸素は体内でも自然に生じますが、増えすぎると、細胞の膜やたんぱく質、DNAなどを傷つけることがあります。
こうした酸化ストレスも、過度な飲酒が生殖機能に影響する仕組みの一つとして考えられています。
検査が正常でも、見直せることはあります
卵子や精子の質を検査で
全て見つけることはできません。
ホルモン検査が正常でも、
飲酒の影響が一切ないことを
証明するわけではありません。
体への負担を減らし、
卵子・精子の質を守ること。
ホルモンとの関係も知りたい方へ
女性のホルモン値を調べた研究もあります。2015年の報告では、直近の飲酒とエストラジオール(女性ホルモンの一つ)やLH(排卵に関わるホルモン)などの値に関連が見られました。
1本だけでも中身の
アルコール量は違います
これまで出てきた「84g」「12.5g」は、飲み物に含まれるアルコールそのものの量です。これを「純アルコール量」と呼びます。
同じ500mLでも、これだけ違います
9%のチューハイなら、
1本でビール500mLの約1.8本分。
「何本飲んだか」だけでは、
見落としてしまいます。
| お酒 | 度数・量 | アルコール |
|---|---|---|
| ビール | 5%・350mL | 14g |
| ビール | 5%・500mL | 20g |
| チューハイ | 7%・350mL | 19.6g |
| チューハイ | 9%・500mL | 36g |
| ワイン | 12%・150mL | 14.4g |
| 日本酒 | 14%・180mL | 約20.2g |
| 焼酎の原液 | 20%・125mL | 20g |
| ウイスキーの原液 | 40%・60mL | 19.2g |
※度数は商品によって異なります。水割り・ハイボールは、中に入れた原液の量と度数で確認します。
「糖質ゼロだから」より、
まずは度数と容量を
確認してください。
計算式と、アルコール20gの目安
500 × 5 ÷ 100 × 0.8 = 20g
アルコール20gに相当する量は、ビール5%なら約500mL、ワイン12%なら約208mL、日本酒14%なら約179mL、焼酎20%なら約125mL、ウイスキー40%なら約63mLです。
週84g未満なら安全
という話ではありません
数字が出てくると、
「そこまでは飲んでもいい」
と思いたくなるかもしれません。
でも、研究の84gは、
妊活中の安全な上限量を
決めた数字ではありません。
「そこまで飲んでいい」という
許可証ではありません。
休肝日があれば、まとめ飲みしていい?
飲まない日を設けても、
週末などの多量飲酒が帳消しに
なるわけではありません。
量・頻度・一度に飲む量・体質。
その全部を含めて、飲み方を見直してみてください。
妊活を始めたら、
夫婦で飲み方を変えていく
妊活中から、
飲まない選択を。
妊娠に気づく前の飲酒も避けられるため、妊娠を目指している段階から控えることをおすすめします。
毎日の飲酒・多量飲酒を、
見直して。
採精の前日だけで終わらせず、普段の量を把握して、禁酒・減酒に一緒に取り組んでください。
続けやすくする、4つの工夫
晩酌の飲み物を変える
炭酸水や、アルコール0.00%表示の飲料を用意する。
一週間のお酒を書き出す
本数だけでなく、度数と容量も確認する。
断る言葉を決めておく
「今は体調を整えていて」で十分。妊活まで説明しなくて大丈夫です。
夫婦で、飲まない楽しみを増やす
相手を監視するより、一緒に食事や休日を楽しむ工夫を。
これくらい大丈夫を、
今、変えられることがある
に。
通院して、薬を使って、タイミングを合わせて。
頑張っているのに、なかなか結果につながらない。
そんな中で
「生活まで気をつけないといけないの」と、
しんどくなる方もいると思います。
努力が足りないわけ
ではありません。
妊娠しない理由を、
過去の自分に背負わせる
必要もありません。
これからも大切にするために。
知らずに続けていた習慣を、
一つ見直してみてほしい。
今日から一緒に、晩酌を変える。
飲み会では、別の飲み物を選ぶ。
そして、お酒を見直すことに加えて、
酸化ストレスを意識し、
毎日の栄養にも目を向ける。
その一歩を、
ご夫婦で始めてほしいと思います。
参考文献
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妊娠に気づく前を含む飲酒への注意と、過去に飲んだ場合の対応。 - American Society for Reproductive Medicine(ASRM)(2022)
Optimizing natural fertility: a committee opinion.
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Pregnancy. Home Use Tests.
FDA:妊娠検査と早い時期の陰性結果について
検査が早すぎる場合に陰性となる可能性。